ESSAY — TACHIKAWA

立川と、おこと

教室のあるまち・立川を、先生が勝手に語る連載エッセイ。
お稽古の行き帰りが、すこし楽しみになりますように。

立川駅 昭和記念公園 グリーンスプリングス IKEA 立飛駅 ららぽーと立飛 お稽古場

お稽古の日の、いつもの道。(イラストはイメージです)

緑並木の上を走る多摩モノレール 立川の公園にある赤鬼のすべり台 立川駅北口の赤いアーチとペデストリアンデッキ
第一回

公園の緑と、余韻のはなし

立川のまちのすごいところは、駅から少し歩くだけで、空がひろくなることだと思う。
昭和記念公園の木々は季節ごとに色をかえて、春は桜、秋にはイチョウが金色の道をつくる。

お箏の音の余韻は、静かな場所ほどよく聴こえます。
だからお稽古の帰り、公園のベンチで五分だけぼんやりするのがおすすめ。
さっきまで弾いていた曲が、頭の中でもう一度鳴りはじめたら、それはとてもよいお稽古だった証拠です。

第二回

立川にある日本庭園のはなし

昭和記念公園の奥に、日本庭園があるのをご存じでしょうか。
あの広い広い公園の、いちばん静かな場所です。

入口の門をくぐると、まちの音がすっと遠くなります。
池をぐるりと囲む小道を歩けば、水面に空と松が映って、風が通るたびに景色がゆらりとほどける。
歩くほどに、呼吸がゆっくりになっていくのがわかります。

私はここへ、耳を休めに行きます。
鯉がはねる音、砂利を踏む音、遠くの野鳥の声。
よく聴くと、庭は無音ではなくて、小さな音の重なりでできている——これは、お箏の余韻にとてもよく似ています。
弾き終えた絃の震えが、ゆっくり空気に溶けていく数秒間。
日本庭園に流れる時間は、あの余韻がずっと続いているようなものかもしれません。

お稽古の帰りにはすこし遠回りですが、季節にいちどは寄りたい場所です。

第三回

お稽古帰りの、あんこのはなし

立川駅の北口大通りを歩いていくと、家紋入りの暖簾が見えてきます。
創業から70年近く、この場所で和菓子をつくり続けている「立川伊勢屋」です。

どら焼きにふれると、湯気が立ちます

たち

お目当てはいつも「たちどら」。
ふっくらとした生地に「たちかわ」の焼き印、割ってみるとあんこがぎっしり詰まっています。
じつは私自身はグルテンをひかえているので、これはもっぱら夫へのお土産。
ひとつ買って帰ると、袋を覗きこんで嬉しそうな顔をするのが、こちらまで楽しみになります。

甘いものを頬張る夫を横目に、私はもっぱら香りとあんこの艶を眺める係。
それでも十分満足なのは、きっとお箏と同じで、味わい方はひとつじゃないから、なのかもしれません。

甘いものは、がんばった自分(と、夫)へのごほうびでもあり、次のお稽古への合図でもあります。
今度いらしたときは、ぜひ北口までちょっと足をのばしてみてください。
お稽古の帰り道が、すこし甘くなりますように。

第四回
じゅんび中

まちに、おことの音を

いつか立川のまちなかで、小さな演奏会をひらきたいという夢のはなし。