TEXTBOOK — 第二話

おことは、
海をわたってきた竜

楽器の歴史のはなし | 読了目安 5分

おことのからだは、竜

みなさんに、ひみつをひとつ。お箏のからだは、じつは「竜」なのです。

お箏の頭のほうは竜頭(りゅうとう)、しっぽのほうは竜尾(りゅうび)、絃が張ってある背中は竜甲(りゅうこう)。昔の人は、この楽器を一頭の竜に見立てました。畳の上に、竜が一頭ねそべっている——そう思って見ると、お稽古場がちょっと冒険の場所に見えてきませんか?笑

さわってみて——竜が鳴きます

竜頭(りゅうとう) 竜甲(りゅうこう) 竜尾(りゅうび)

千三百年前、船に乗って

この竜がやってきたのは、いまから約1300年前の奈良時代。中国から、遣唐使の船に乗って海をわたってきました。スマホも地図もない時代の船旅です。何日も何日も揺られて日本に着いた楽器の音を、はじめて聴いた人はどんな顔をしたのでしょう。奈良の正倉院という宝物庫には、そのころのお箏がいまも大切にしまわれています。

お姫さまの楽器になった

平安時代になると、お箏はお姫さまたちの楽器になりました。『源氏物語』にも、お箏を弾く場面がたくさん出てきます。月夜の御殿に、絃の音がぽろん、と響く——千年前の夜を、ちょっと想像してみてください。

江戸の天才、八橋検校

そして江戸時代。八橋検校(やつはしけんぎょう)という目の見えない天才音楽家があらわれて、お箏の曲をたくさん作り、いまのお稽古のもとになるかたちを整えました。京都のおみやげ「八ツ橋」は、このひとの名前からきたという説があります。おことの形に似た、あのおせんべいです。

そして、いまへ

お正月にどこからか聴こえてくる「春の海」は、約100年前に宮城道雄というこれまた目の見えない作曲家が作った曲。そしていま、お箏はポップスもゲーム音楽も弾いてしまう楽器になりました。

1300歳の竜は、いまも新しい歌をおぼえ続けています。つぎにその背中の絃をはじくのは——そう、あなたの番かも!

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