TEXTBOOK — 第五話
漢数字だらけの楽譜、
漢数字だらけの楽譜、
こわくない。
はじめて見ると、ちょっとびっくりする
お稽古で楽譜を渡されたとき、五線譜でもドレミでもなく、縦書きの漢数字がずらっと並んでいるのを見て驚いた人も多いはず。「これ、本当に読めるようになるの?」——大丈夫です。ルールは実はとてもシンプル。今日で、その不安を終わりにしましょう。
読む方向は、上から下、右から左
お箏の楽譜は縦書き。一本の行を上から下へ読み、読み終えたら左どなりの行に移ります。この形は家庭式譜(かていしきふ)と呼ばれ、明治時代に坂本五郎という人が考えた記譜法です。第四話でお話しした生田流はこの縦譜を使い、山田流はもともと横書きの楽譜(横譜)を使ってきました。
文字にふれると、その絃の音が鳴ります(ぜんぶで五つ)
七七八六五
数字の正体は、絃の名前
第一話でお話ししたとおり、絃の名前は一から十までは漢数字、そのあとは斗(と)・為(い)・巾(きん)。楽譜に「七七八」と書いてあれば、それは「七の絃、七の絃、八の絃を順番に弾いてください」という意味。数字は音符ではなく、「どの絃を弾くか」の道しるべなのです。ドレミの位置を覚える鍵盤楽器とは、まったく違う発想の楽譜というわけです。
おぼえておきたい
数字の右横に小さく書かれた文字は「奏法記号」。たとえば「ス」はスクイ爪(親指の爪の裏で弦をすくい上げる)、「ヒ」は引色(ひきいろ)(弾いたあとに弦を少し緩めて音を下げる)の合図です。小さな文字ですが、演奏の表情を決める大事な指示です。
数字は、演技の台本に似ている
数字だけを追っていくと、はじめは無機質に見えるかもしれません。でも実際に弾いてみると、この漢数字の並びは曲の呼吸そのもの。まるで台本のセリフのように、次はどの音がくるのかを教えてくれます。お稽古で先生が「はい、七、七、八」と声に出して数えてくれるのも、この楽譜を体に覚えさせるための知恵なのです。
迷ったら、声に出して読んでみる
指が止まってしまったときは、まず声に出して数字を読んでみてください。「なな、なな、はち……」と言葉にするだけで、次の指の動きが自然と体についてくることがあります。漢数字だらけの楽譜は、慣れてしまえばこわくない——それどころか、いちばん頼れる道しるべになりますよ。