TEXTBOOK — 第六話

「箏」と「琴」、
ほんとうは違う話

表記のはなし | 読了目安 5分

「お琴、習ってるの?」と聞かれたら

お稽古を始めたことを周りの人に話すと、よく「お琴、習ってるの?」と聞かれませんか。実はこの「琴」という字、教室で正式に使っている漢字とはちょっと違います。当教室のプリントや看板をよく見ると、「箏」という字を使っているはずです。同じ「こと」と読むのに、なぜ字が違うのでしょう。

看板をタップすると、文字が入れ替わります(いま:箏)

箏 琴 楽器そのものの名前

そもそも「こと」は、弦楽器みんなの名前だった

じつは大昔、「こと」はいまのお箏一つだけを指す言葉ではありませんでした。『源氏物語』には、「きん(琴)のこと」「さう(箏)のこと」「びわ(琵琶)のこと」という書き方が出てきます。弦を張って鳴らす楽器を広く「こと」と呼び、どの楽器かを区別するときだけ「〇〇の・こと」と言い添えていたのです。つまり「箏」は数ある「こと」のなかの一つの名前、「琴」はもっと大きな仲間の総称だった、というのが本来の関係です。

なぜ「琴」の字をよく見かけるの?

答えは、戦後の漢字のルールにあります。1946年に決められた当用漢字には「箏」の字が入っていませんでした。新聞やテレビは決められた漢字しか使えないので、代わりに似た意味の「琴」の字で書くようになったのです。この習慣が長く続いたため、いまでも世の中では「お琴」という表記のほうがよく見られます。

当用漢字表は1981年に常用漢字表へ改められましたが、「箏」はいまも常用漢字表に入っていない「表外漢字」のままです。そのため、新聞や一般向けの文章では、いまも「琴」の字で書かれることが多くなっています。

おぼえておきたい 楽器そのものを指すときの正しい漢字は「箏」。「琴」は間違いというより、「箏」が常用漢字ではないために広く使われている表記です。お稽古ノートには、ぜひ「箏」と書いてみてください。

教室でも、「箏」と書きます

当教室が「お箏教室」と名乗っているのも、この一字にちゃんとこだわりたいから。次にお友だちから「お琴、やってるんだね」と言われたら、「じつは箏っていう字を使うんだよ」と教えてあげてください。ちょっとした物知りになれる、小さな豆知識でした。

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